保育士の待遇、学童の待機児童…こども家庭庁の2025年度予算はどうなる? 概算要求をチェック

 こども家庭庁は8月末、2025年度の予算編成に向け、取り組みたい事業と必要な費用の見積もりを盛り込んだ概算要求をまとめました。概算要求額は、一般会計と特別会計を合わせ、6兆4600億円(前年度比2394億円増)です。年末にかけて、財務省との調整が行われます。東京すくすくでは、予算編成の過程をフォローしていきます。

写真 公園で駆け出す子どもたち

概算要求とは

各省庁が翌年度に実施したい政策を示し、見積もった経費や人件費などのおおまかな予算を財務省に提出すること。財務省はこれをもとに、予算編成を行う主計局を中心に、各省庁の担当部署からヒアリングを実施。予算要求が妥当かどうかを厳しく査定し、絞り込んだ上で、年末に政府予算が決定、年明けの1月下旬に国会に提出されるという手順を踏む。

概算要求の主なテーマは4つあります。テーマごとに政策をピックアップして紹介します。

1. こども・若者世代の視点に立った政策推進とDXの強化

2. 若い世代のライフデザインの可能性の最大化と社会全体の意識改革

3. より良い子育て環境の提供

4. すべてのこどもの健やかな成長の保障

1. こども・若者世代の視点に立った政策推進とDXの強化(1304億円・事項要求を除く)

◆こども・若者意見反映推進事業

政策に子ども・若者の声を反映させるための「こども若者★いけんぷらす」のメンバーを引き続き募集する。こども家庭庁など各省庁が掲げる子ども・若者関連のテーマや、子ども・若者が意見をしたいテーマに関し、声を聞く。

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◆放課後児童クラブDXの推進

学童クラブの利用申込みは、保護者が紙で役場や事業所に提出する自治体がまだまだ多い。職員が一枚ずつ手入力し、保護者の希望とのマッチングをしているが、うまくいかず希望がかなわなかった例もある。電子申請できるようにし、待機児童対策につなげる。学童職員が記入する子どもたちの記録や障害児の発達の記録などもデジタル化して業務効率化を図る。

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◆母子保健のデジタル化の推進

妊婦健診や乳幼児健診は、紙の問診票に記入し医療機関に提出しており、毎回、住所や氏名など同じ内容を書かなくてはいけない。また、健診結果は医療機関が母子健康手帳に記入するため、紙の手帳を持ち歩く必要もあるのが現状。問診票は母子手帳アプリでネット入力し、住所や名前は自動入力ができるようにする。現在、希望する自治体が導入しており、来年度は導入事例を拡大し、ガイドラインを作成する。

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◆障害児支援分野におけるICT化の推進

障害がある子どもの発達支援は、山間部や島しょ部など、住んでいるエリアによって施設に通うことができない課題がある。居住地にかかわらず、適切な支援を受けられるよう、タブレットなどICTを活用して専門職による支援を遠隔で行うことを目指す。来年度は、全国で行われている先行事例の中から5つほどの自治体を選定し、モデル事業を展開する。

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2. 若い世代のライフデザインの可能性の最大化と社会全体の意識改革(3611億円)

◆民間企業と連携したライフデザイン支援

若者に結婚や出産について考えてもらう機会をつくろうと、民間企業が若者向けの商品やサービスを打ち出す際に、ライフデザインを応援するイベントを開催。企業の従業員のライフデザインを支えるプロジェクトも支援する。

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◆社会全体の意識改革に向けた民間主導の取り組み支援

社会全体で子ども・子育て世帯を支える意識をつくり出すため、経済界や労働界、地方自治体などが中心となり、働き方の見直しや社会機運醸成につながるようなシンポジウム開催などを支援する。

◆乳幼児健康診査の推進

出産後から就学前までの切れ目ない健康診査のために、「1カ月児」と「5歳児」健診を自治体に実施してもらうため、費用を補助する。母子保健法では、「1歳6カ月児」と「3歳児」健診が義務付けられおり、全国的には任意だが「3~6カ月児」「9~11カ月児」も実施されている。一方、過疎地では医師を確保できず、任意の健診を実施できていない地域もある。このため、医師の派遣や保護者が遠方の健診会場へ行かなければいけない際の交通費などを補助する。

3. よりよい子育て環境の提供(4兆5273億円・事項要求を除く)

◆こどもホスピス支援モデル事業(仮称)

難病やがんなど重い病気の子どもたちが、家族と過ごす施設「こどもホスピス」は全国にまだ少ない。施設を利用したい親子がどれくらいいるのか調査するとともに、自治体や学校、医療機関、NPO法人などの支援団体ら関係者による協議会の開催を支援し、ホスピスの充実を図る。

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◆児童手当の拡充

2024年10月から児童手当を拡充する。所得制限を撤廃し、支給期間を高校生まで延長。第3子以降は3万円。(第3子のカウント方法は、22歳年度末までの上の子の生計費の負担がある場合をカウント対象とする)

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◆入院中の子どもへの付き添い家族の環境改善

こども家庭庁の調査では、入院した子どもへの付き添いを家族にお願いする医療機関は約4割だった。家族用のベッドはなく、床やソファで寝るという現状がある。環境改善のため、医療機関が家族用に休養できるスペースを設けたり、簡易ベッドやオンライン面会用のタブレットを導入したりする際の補助をする。

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◆保育士の処遇改善

こども家庭庁によると、保育士の給与は、全産業平均よりも1割以上低い。人事院勧告をベースにさらなる処遇改善を進める。

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◆こども性暴力防止法の施行に向けたシステム開発

日本版DBSを施行するため、重要課題や論点の検討、ガイドライン作成のための調査研究、有識者会議の開催、啓発活動を行う。性犯罪歴を照会するシステムの設計・開発を行う。

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4. すべてのこどもの健やかな成長の保障(1兆1712億円・事項要求を除く)

◆地域における不登校の子どもへの切れ目ない支援

令和4年度、小中学校の不登校の子どもが過去最多の約30万人となった。そのうち約4割(11万人)が学校内外で相談できていない。学校に戻ることを前提とせず、社会との何らかのつながりを地域全体で支えるため、自治体の先進事例を調査研究し、全国展開する。

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◆こどもの貧困対策の強化

困難を抱える子どもに対し、安心して気軽に立ち寄れる食事を提供する場所などを設け、支援が必要な子どもの早期発見、早期対応につなげる。

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◆児童相談所の人員体制の強化、一時保護施設の環境改善の推進

児童相談所の人材確保のため、職員の採用・育成・定着に向けた仕組みを構築する。公募の民間団体が、児相の仕事の魅力発信や、職員同士のピアサポートの仕組みを作る。また、心理職による職員のカウンセリングでメンタルケアができるようにする。新人の職員には、家庭の支援で保護者と対峙(たいじ)するのは負担が大きいため、VR体験で困難家庭の支援をシミュレーションする。

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